ヨーロッパの動物病院の現状

あるところで海外(ヨーロッパ)の動物病院の視察報告を聴いてきた。イギリス・ドイツ・スペイン・ポルトガル・イタリアの5カ国だったが、それぞれの国の経済状況の違いや犬猫の飼育率や飼育環境の違い、動物病院の規模や施設数と人口のバランス等々は、さすがにアメリカなどの状況とはかなり異なりますが、逆に日本の現状に近い部分もあるようでした。

イギリスは流石に、動物愛護に関する法律がかなりしっかりしたものがあります。例えば仔犬を狭いゲージやショーケースに入れて展示することを禁止しているので、ペットショップはハロッズ以外には一軒もなく、ブリーダーが飼い主の環境を調べて、妥当と思われる飼い主にのみ譲渡している。またイギリスは歴史的に階級社会がはっきりしている国なので、裕福な飼い主は専門医のいる二次診療も受けられる24時間サービスの病院などに行き、一般の人は一次診療のみのクリニックに行き、必要があればより設備の整った病院に紹介してもらうこともできる。年金受給者や低所得者、自己破産者の方たちも、審査確認後、低所得者向け動物病院で診察を受けられる。どんなに低所得者でも動物に普通の診療を受けさせることが出来るので、捨てられることもなく、飼い主と一緒に生活していけるという素晴らしいシステムだと思いました。またこの低所得者向け病院はすべて寄付金で運営されているというから凄いです。

ドイツは飼われている動物が犬より猫の方が多く、猫専門の獣医師が多いらしい。イギリスほど徹底していないがブリーダー経由 での購入がメインだという。動物病院のつくりはどこのスペースも広く、ゆとりある設計になっている。非常にセンスがよく、スタッフルームもこだわりがあり、働きやすそうだった。

スペインのバルセロナの動物病院の数は人口の比率からすると、東京の半分だそうです。ただ病院内で従事している獣医師の数が日本国内では4人以上が5%に対し、スペインでは20%もいるということで、この原因は獣医師が余っている状況だからだという。国の経済状況があまり良くない事も原因しているでしょう。

ポルトガルは動物病院の階層分け制度があり、設備のよい大病院は少なく、一般のクリニックは異常に多く、ワクチンや簡単な診療をする診療所がそこそこある状況なのですが、小規模診療所の廃業傾向があると言う。またオーナーと経営者を分離し、オーナーは獣医療に専念でき、経営を専門家に頼んで、しかも利益が出たら設備投資をするといった無理をしない経営スタイルをとっている。その点はうちと似ているような気がした。違う点はカルテの電子化と飼い主と一緒に進める診療、つまりネット上で飼い主がカルテを見れることで情報を共有して診療していくスタイルをとっている。将来的に検討する必要があると感じた。

イタリアは所得税50%、消費税25%という信じられない高い税金で成り立っているが、人件費の低さと診療科目の細分化や専門化が進んでるため、獣医師数が30~50人という病院も多いという。

ヨーロッパの病院はどこもあまり大きな看板を出しておらず、実に地味なものですが、どこもセンスが良いようです。診療設備に関しては日本から比べるととてもお粗末な感じがしますが、診療一件一件に充分な時間をかけ、丁寧なインフォームドコンセントを実施しています。また自然療法やその他の代替療法を取り入れた統合医療を実施している動物病院が、本場ヨーロッパだけあってとても多いと言われている。